フォトリーディング公認インストラクターを訪ねるインタビューシリーズ。
第 2 回は 2011 年 10 月に刊行された著書「マインドリッチー人生を変える新しい価値観」が、

発売 2 週間で見事Amazonの人生・教訓部門で 1 位となった玉村一郎さんです。
新しい時代の幸福論ともいえるこの本を書いた経緯や、出版後に受け取った思わぬギフト、

さらには、子供のころから無類の読書家であった玉村さんだからこそ知る、
フォトリーディングで小説を読むことの喜びと意義について、たっぷりと語っていただきました。

ハングリー精神に替わる人生のエンジン

―昨年出された著書『マインドリッチ―人生を変える新しい価値観』には、“分け与える”ということをキーワードに、自分が持っているものや役割に気づくことで、人はもっと幸せになれるということが、玉村さんのこれまでの経験を踏まえて書かれています。この本を書かれたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

僕は、フォトリーディングのほかにマインドマップや全脳思考も教えていますが、それらについての本は書きたくなかった、というのがまずありました。たとえ僕がそれを書いたとしても、それぞれを開発した創始者の方々を上回ることもないわけですし、“玉村一郎の本”にはならない。そこで、では自分はどう呼ばれたいのか、自分は何者なのか、を考えた。神田昌典さんの著書『非常識な成功法則』に、自分がやりたいことを知るには、まずやりたくないことを書き出してみる、ということが書いてありますが、僕が嫌いなものは何かというと、いわゆるハングリー精神です。

―自分より大きなものに追いつけ追い越せという…。

そう。僕は親から、「お前は欲がない」とさんざん言われて育ってきました。だから、目標を立ててそれをやり遂げる、というようなことをやらないといけないのかと思い、自己啓発とかいろいろ受けてきたけれども、研修会社を経営する父のもとに移った僕が、最終的にそこでどうにもならなくなって、その会社を辞めざるを得なくというか、旅立つことになったとき、そういったハングリー精神や、目標設定というものが、まるで役に立たなかったように思うんです。

ゼロからのスタートになったそのころ、ちょうどマインドマップのインストラクター研修が終わり、これからどうやって教えていくかということを、みんなでボランティアで作り上げていったのですが、そうやって、お金にはならないけど誰かのためにと思って動いてきたことが、結局、自分の起業のエネルギーになりました。

成功には、目標設定型と展開型という 2 つのタイプがありますが、僕が近いのは展開型。これは時代によっても違って、高度成長時代は、何をやればうまくいくかが分かっていた時代ですから、目標を設定してそれをがんばって達成するという目標設定型の方が成功しやすかった。ところが、バブルが崩壊して以降、何をすればうまくいくかが見えてこない。ならば、自分のこの展開型のパターンというのは、この時代を生き抜く方法として、ほかの人の参考になるのではないか。それが、この『マインドリッチ』が生まれた背景です。

―いつかこういう本を出したいと、以前から温めていたんですか?

いや、僕、もともと本は出したくなかったんですよ。だって、著者になったらプライバシーは失うし、ネットで悪口いっぱい書かれるじゃないですか(笑)。ですから、本を出しませんかと声をかけていただいたとき、「出したくない」から始まったんです。なぜなら自分は満ち足りているから。じゃぁ、それを本にしましょう、ということになったわけです。

―本を出して、周りからの反応はいかがでしたか?

僕、高校の同窓会の会長をやっていて、毎年卒業式や入学式に出席するのですが、このあいだの卒業式で、校長先生がこの本のことを紹介してくれたんです。卒業生への贈る言葉の中で。

―それは素晴らしいですね!

当校の 2 期生であります玉村一郎氏が、その著書『マインドリッチ』の中で、父との葛藤があったけれども本当はその父に大きく守られていたことに気づきました、と書いている。PTA のお父様、お母様、皆さんのお力があって、皆さんのお子さんは今日巣立つことができます、といった話を校長先生がしてくれた。それまで僕は、同窓会では自分の仕事の話はほとんどしてこなかったのに、この本を読んでいただいて、その内容の端々を読み取って生徒たちに話してくださったというのは、とてもうれしかったですよね。

一郎氏が、その著書『マインドリッチ』の中で、父との葛藤があったけれども本当はその父に大きく守られていたことに気づきました、と書いている。PTA のお父様、お母様、皆さんのお力があって、皆さんのお子さんは今日巣立つことができます、といった話を校長先生がしてくれた。それまで僕は、同窓会では自分の仕事の話はほとんどしてこなかったのに、この本を読んでいただいて、その内容の端々を読み取って生徒たちに話してくださったというのは、とてもうれしかったですよね。

自分と対話する 3 日間の講座

―本を書くにあたって、フォトリーディングから恩恵を受けた部分はありましたか?

はい、フォトリーディングはかなり使わせていただいています。この本は一種の幸福論を中心にしていますが、いま社会で語られている幸福論にはどんなものがあるかについて、いくつもの本をフォトリーディングしました。昨年は国王が来日してだいぶ話題になった、ブータン関係の本などです。ブータンの幸せが日本の理想の幸せかというと、それもちょっと違うな、ということもちゃんと感じながらね。ほかにも、望月俊孝さん、中山和義さん、本田健さんなどいろいろな方の幸福論を大量にフォトリーディングし、じゃぁ、僕の本は何なのか、を考えていきました。

―ということは、自分が考えていることや立場というものを、より明確にするために、いろいろな本を読んで探っていったということでしょうか。

そうです。結局、何かと比較しない限り、自分のことって分からないんですよね。他者に出会ってはじめて自分が分かる。ですから、フォトリーディングに限らず読書というものの目的も、本の内容を理解するだけでなく、その本を通じて自分を知る、ということがあるのではないでしょうか。

―フォトリーディングをして、自分を知る、ですか。

そうです。フォトリーディングをすれば、難しい本でも何でも読めるようになるというのは、大きな間違いだと僕は思っています。読む側がどれだけの知識を持っているかで、その本から引き出せるものは全然違うわけですから。

一方、知識を持っているから理解できるかというと、それもまた違うわけです。僕はよく英語学習に例えて言うのですが、英単語をいくつまで覚えれば、英会話ができるようになるのか。英文法をどれだけ知っていれば、英会話ができるのか。おそらく、それらの数をいくら増やしても、それを自分の中で話すことに変換できなければ、会話をする力にはなりませんよね。フォトリーディングは、それを変換する力だと僕は思っています。フォトリーディングは、それまで自分が持っている知識と、新しく読んだ本とが出会う中で、自分のパフォーマンスを上げる方法である、というところに集約されてくるのではないでしょうか。どう読むかというよりは、どうパフォーマンスを作り出していくか。中学高校と 6 年間英語を勉強したのにしゃべれなかった人がしゃべれるようになる。それがフォトリーディングなのだと思います。

―パフォーマンス、つまり行動が変わってくるということですね。フォトリーディングにそのような力が秘められているというのは、具体的にはどのようなメカニズムなのですか?

私たちの脳には、学習したり分析したりする働きと、想起したり検索したりする働きの 2 つの働きがあります。フォトリーディングは学習のツールだとよく勘違いされますが、そうではない。本をたくさん読めば知識がつくかというと、つきません。知識をつけるのは学習です。学習とは記憶です。記憶とは、物事や情報を体系的に脳内に刻み込むことです。これが起きない限り、知識にはならない。ですから、本を読んだだけでは、断片的な情報が断片的に入ってくるだけですから、基本的に学習はできないです。

でも、学習したからといって、それが無条件に役に立つわけではない。学習した内容を、そのときどきで脳内で検索し、想起できなければいけないわけですよね。検索する力にはいろいろありますが、その 1 つが論理というものです。何かの道筋を使って、次に来るのは何かという予測を立てる。ただ、これは非常に遅いプロセスです。それに対し、一番早いプロセスは「思いつく」ということ。フォトリーディングは、本から得た情報を、論理というものをある意味で外して、直感というものを使って検索できるようにしていくアプローチです。

ただ、それができるようになるには、自分の中にはそういった検索能力があると認識することが必要ですよね。そのことをさまざまな形で体験する。それが、フォトリーディングの講座です。インストラクターは、その人がそれに気づくためのさまざまな機会を提供する、という役割を担っています。

―玉村さんは、通常のフォトリーディング集中講座ではなく、3 日間のフォトリーディング・エグゼクティブ講座を開催しています。これはどんな講座なのでしょうか。

さきほど、フォトリーディングの講座は自分の検索能力に気づくための機会と言いましたが、その場で気づかなかったり、1 回どこかで溜めを経ることによって気づいたりする場合もある。2 日間で気づける人ももちろんいますが、3 日間の方がその数は増えるだろうなと思ったわけです。実際アメリカでは、フォトリーディングの講座は通常 3 日間で行われていて、合間に 1 人になって自分に問いかける時間というものが非常に重視されています。それを参考に、2 日間の講座ではなかなか消化しきれないと悩んでいる人のために、自分で考える時間を提供する。そのための 3 日間なんです。

コンテンツとしては、洋書を読むことを取り入れています。さきほども言ったように、本というものは、その人のレベルでしか読めない。ですから、フォトリーディングができたかどうかも、結局はその人と選んだ本との関係性で変わってくるんですね。普通のビジネス書などをフォトリーディングしたとき、フォトリーディングしたからこそ読めたのか、しなくても同じように読めたのかが、なかなか納得しきれない場合があります。そこで、1 回それがどうにもならないようにしてあげるために、英語の本をフォトリーディングするんです。どうせ読めないものを、それでも何とか読んで情報を引っ張り出すという経験を、苦しみながらやってもらう。そうすると、次に日本語の本をやったときに、ああ、フォトリーディングを使うと楽なんだな、という認識変革が起きるんです。

あのころと同じように小説が読める喜び

―玉村さんは、フォトリーディングを始めてからご自身の仕事のパフォーマンスがぐんと上がり、その年の会社の売上 1 億円増につながったと伺っています。その一方、著書の中では、小説をフォトリーディングすることをすすめていらっしゃる。フォトリーディングというとビジネス書だよね、というイメージを持つ方がわりと多いと思うのですが、小説をフォトリーディングすることの魅力はどこにあるのでしょうか?

僕はもともと読書家で、中学 2 年ですでに年間 100 冊は読んでいました。星新一、筒井康隆、レイ・ブラッドベリなどの SF から、日本の古典文学まで、2 日に 1 冊くらいのペースで読んでいた。当時は時間があったということもありますが、いま、そのときと同じようなモチベーションで小説が読めるかというと、読めないんです。これは、加齢による減退です。年齢が上がることによって、時間感覚が変わってくる。そうすると、短い時間でできるパフォーマンスも落ちてくるんです。そういったことが一番影響するのが、小説を読むことだと僕は思います。

J・モーティマー・アドラーの『本を読む本』に、小説の読み方が書いてあります。それは、一気に読むこと。そして、没頭して読むこと。なぜならば、物語が展開し、人の気持ちが展開していますから、一気に読まないとそれが断絶してしまう。小説を楽しむためには、そのように没頭して一気に読む力が必要なのだけど、これが加齢によって失われるんです。僕もだいぶ失われました。特に、社会人になると、仕事でさまざまな課題をもらいますよね。そのときに小説を読んでいると、なんだか自分が暇つぶしをしているようで、すごく追われ感が出てきて、そこで離れてしまったんです。そして再び小説を読もうと思ったときに、読めない自分になっていた。あれだけ小説が好きだった人間なのに。

それがまた変わったのは、フォトリーディングのインストラクターになったあとです。教える内容の中に「フォトリーディングは小説にも使える」という一説があった。僕は、自分が経験していないものや信用していないことを受講生に言うのはつらいですから、じゃぁやってみようと思い、やってみました。あれはたしか『ハリー・ポッター』の最終巻が出たときじゃなかったかな。発売翌日に買って、一晩で読みきりました。約 500 ページの上下巻だから、約 1000 ページを。

―それは、何が起きたのでしょうか?

フォトリーディングで小説を読むと、まず、とっつきがよかった。小説はとっつきがいいものと悪いものがあって、言葉づかいに慣れなかったり、次々にいろんな登場人物が出てきたりすると、とっつきが悪くて一気に走れない。そうすると没頭も起きない。ハリー・ポッターも最終巻は結構複雑なんですが、1 回フォトリーディングでぱっぱっと最後までページをめくり、また頭から読んでみると、本当に寝食を忘れて読めたんです。この状態が前に来たのはいつだろうと思ったら、あの中学のときでした。あのころはこうやって本を読んでいたということを、すごく思い出したんですね。

なぜそのように読めたかというと、1 つには、共感覚が起きたからです。共感覚とは、文字が音になって聞こえたり、味が色になって見えたりする感覚のこと。本は文字情報ですが、書かれているセリフが音になって聞こえる。そのような感覚が頻発したんです。

そうやって、加齢で減退した力をフォトリーディングのお陰で取り戻すことができ、いまではまた、2~3 日で 1 冊小説を読むようになりました。いまは本当に、歩きながらでも、信号待ちの間でも、エレベーターが上から降りてくる 20 秒の間でも本を開いて読みたいと思う。その力を、フォトリーディングが僕にくれているような気がします。

―以前は、フォトリーディングで小説を読むと少しもったいないのでは、とも思っていたのですが、いまのお話を聞いて非常に納得しました。

フォトリーディングで小説読みたいと思ったでしょ、いま。

―はい、思いました(笑)。

小説はモチベーションを拡大させるための大切な遊び

結局ね、多くの人がビジネス書でも何でも本を読んで、なぜ役に立たないと言っているかというと、その本を読むモチベーションが弱すぎるからなんですよ。僕は中学のときに星新一を読み、レイ・ブラッドベリを読み、翻訳だけでは飽き足らず英語の原文も読み、書店で「今月刊行される本」のリストを熟読しては「次はこれが読みたい!」と思って読んでいた。『幻魔大戦』に夢中になったときは、感動した箇所を全部ワープロで打ち直して小冊子まで作っていた。そんな中、アイザック・アシモフの『空想自然科学入門』を読んだらエントロピーというコンセプトが出てきて、中学生には分からないですよ、エントロピーなんて。でも、そのしばらくあとに出たのが『エントロピーの法則』というビジネス書で、僕はその言葉は知っていた。それが、その本を僕が読むモチベーションになっているわけです。

そういうふうに、自分が知りたいと思って得た知識というものが、自分の世界を拡げていく。学習にモチベーションは間違いなく必要で、そのモチベーションを拡大させてくれるのは小説です。小説は、関心を拡大させるための遊びなんです。ビジネス書はそのあとにくるものなんですね。

小説を読み、関心を持った事柄をほかの本で深堀りしていく。そうすれば、その人の個性が作られます。いまの時代こそ、本当の意味で個性が求められていますから、そのためにもぜひ、小説をフォトリーディングしてもらいたいと思います。

―いまちょうど季節が春なので、新社会人の方に向けてメッセージをいただこうと思ったのですが、それがまさにメッセージでしょうか。

そうですね。もう 1 つ僕が言えるとすると、社会に出てすぐというのは、会社など、合わせなければいけないものが必ず出てきますよね。合わせることに必死になってしまうと、だんだん遊びがなくなってしまうんです。僕の読書経験が途切れたのも、やはり社会人になったときですから、非常に危険な時期でもあります。小説なんか読んでいると自分を責めてしまうんですよね。仕事もできないのに、みたいな。だけど、それならば、例えば自分の仕事と同じ業界を舞台にした小説を読むとか、同じ分野の小説を読むといい。そうやって、その時期に本との結びつきを失わないでいただければ、あとで大きな差になってくると思います。

その意味でも、新社会人はビジネス書は読まない方がいいです(笑)。だって、まだ真贋が選べないし、うまく仕事をする道というものは、やはり量稽古でしか身につかないですから。小ずるい仕事スタイルを身につけて、うまく立ち回ったのにあとになってボロボロになっていく話とか、小説にはたくさんあるじゃないですか。やっぱり、人生そんなものでは済まないですからね。

聞き手:山下聡子
(2012 年 4 月 玉村一郎セミナールーム ダヴィンチカフェにて)