大嶋友秀さん【前編】

日本一の本の街で学ぶフォトリーディング

神保町は日本一の古書街で、専門分野に特化したお店がたくさんあります。ここは和歌や詩の本の専門店、ここは中国関係図書。古書だけでなく、刷毛の専門店なんかもあります。

―ほんとだ、おもしろいですねぇ。

集中講座では、お昼はいつも皆さんで外に出て、私のおすすめの店で食べています。1 日目のお昼はおいしい中華。講座が土日の場合の 2 日目に来るのが、このカレー屋さんです。神保町は、中華の激戦区であると同時にカレーの激戦区でもあるんですね。ここは事務所からも近いし、何よりも評判のお店なんですよ。

お昼は 1 時間ぐらい時間をとって、パパッと食べるから、30 分以上は時間が空くんだよね。だから、ぜひ街を歩いてきてくださいと言うんです。

―本の街で過ごすフリータイム。いいですね。

早速おもしろそうな本を見つけて、買ってくる方もいますよ。こういう、店の前にポンと置いてあるワゴンありますよね。こういうところに、安くて、あまり売れないんだけどおもしろい本があるんです。僕も、反応するとすぐ買ってしまう。

―どんな分野の本がお好きなんですか?

いろいろだね。文化、文学、社会学。どんな分野というより、自分自身が……お、ちょっと待ってください(と言って、店先のワゴンから本を手に取る大嶋さん)。『愛について』(ルージュモン著)、全然知らない著者ですね。フランス人かな。こういうのをパッと見つけちゃうとですね、反応しちゃうんですよ。

―いまは何に反応されたんですか?

タイトルだね。本との出会いっていうのは非常に微妙で、一期一会みたいなものがある。特に古本はそうですね。本がね、「見つけてくれー」ってしゃべってくるみたいな感じになる。ちょっと待っててね、これ買ってきます(大嶋さん、店内へ)。

―早速お買い物をされたわけですが、神保町で行う講座は、フォトリーディングを学ぶだけでなく、いろいろな刺激を受けられますね。

そうですね。2 日間で教えるのは当然フォトリーディングという 1 つの方法ですけど、僕が同時に伝えたいことは、「本を読む」ということなんですよね。本を読むっていったい何だろう。自分にとってどういうことを意味するのか。

本は、あるときは自分を慰めてくれたり、あるときは人の傷に塩をすりこむようなものであったりする。結構親切であり、ときどき不親切です。そういうことも含めて、本ておもしろいよね、ということを、2 日間の講座をやりながら伝えたいと思っています。

あ、ここが平日の講座の 2 日目に来る洋食屋さんです。明治創業の老舗でね、ここがまたおいしいんですよ(笑)。

本が好きになる大人の学び

―さて、事務所に戻ってまいりました。さきほど店頭でパッと本を見つけて買われていましたが、あれにはやはりフォトリーダーならではの視野の広さが影響しているのでしょうか?

そうですね、ある意味そうで、ある意味そうでない、と思います。そうだというのは、視野を広く使って情報を吸収するのは、確かにフォトリーダーの 1 つのセンスです。そうでないというのは、それはもともと誰もが自然にやっていることだから。

僕は、フォトリーディングはそんなに特別なものだとは思っていないんです。私たちの脳は、日ごろからものすごいスピードで情報を処理しています。フォトリーディングは、それを目の前の本に対してやるだけだから、難しいことではない。できない理由がないんです。

―大嶋さんのフォトリーディング集中講座は、少人数で行うのが特長と伺っています。

5 人がマックスですね。机を L 字型のカウンターのように並べてやっています。フォトリーディングというのは、すごく質問が多い講座だと思っているんですよ。疑問がたくさん湧いてくる。その疑問を解いてあげないと、親切ではないと思っているんですね。私自身、フォトリーディングの講座を受けたとき、たくさん疑問がありましたしね。

子どもは、学習するとき頭で理解できなくても、とにかく覚えることができます。ところが、大人の場合は理屈が通っていないとだめで、頭で理解できないことは飛ばしていってしまうんです。飛ばすと、結局すべてがいい加減なことになるんですね。そうならないように、伝える側が手渡していかないといけない。

受講生が大勢いると、その理解度にもばらつきがあるし、どこまで分かっているかが教える側にも分かりにくい。となると、やはり無理が生じてきます。少人数だとそのケアができる。どんな質問をされても、それを拾いながら、どこででも道草できるし、どこまでも広がっていく。深いところに行けば行くし、でも少人数だから、きちんと戻ってこられるようにガイドできる。そういう意味で、僕の講座はジャズセッションのようで、毎回毎回違います。

―でも、教える側としては結構大変なのではないでしょうか?

疲れますけど、でもそこはこだわりますよ。そういう講座にしてあげた方が、本好きになってもらえる。その方がおもしろいでしょ。人生がおもしろくなるっていうか。

本はすごく可能性を持っていると同時に、危険なものでもあると思うんですね。そこに自分を預けてしまうことがあるから。だから、本の読み方を教えるとはどういうことか。それを自分に問いかけたときの、1 つの答えです。そういう意味で、本当の魔法をどう伝えるか、ですね。多くの人が、フォトリーディングはページをめくるだけで内容がぽこぽこ頭に入ってくる魔法だと勘違いしているようですが、そうではない。本当の意味での本の魔法を伝えられるかどうか。その責任は大きいですよね。また、それを伝えたいよね。

新刊書店に山積みされているような本ばかりじゃない、奥に隠れて誰も読まないような本こそが、実は人生を変える力をもっていたりする。そういうものを自分で探していくような視点や、きっかけ、そんなものも伝えたいです。

そのつながりで、僕は 3 年ぐらい前から「Yokohama Book Cafe」という勉強会をやっています。これは、対話を中心とした読書会で、月 1 回、テーマ本 1 冊と副読本 2 冊を読んで、ワールドカフェをするという場なんです。

今月のテーマ本は、宮崎駿さんの『出発点―1979-1996』。これに、押井守さんと、倉本聰さんの本を副読本にして、創作者という視点から社会をどう見るか、といったことを話していけるかなと思っています。来月は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』という歴史の本に、副読本として松岡正剛さんの情報の本を添えます。歴史や時代の大局をどうとらえるかといったことを考えられればいいなと。テーマと本は、毎回僕の方で選んでいます。

―これは硬派なセレクトですね。参加者は何人くらい来られるんですか?

テーマによってバラつきがありますが、10 名から 20 名くらいですね。Facebook を使って案内して、年齢では 30~40 代の人が多いです。組織開発に関わっている人が中心に来るかな。

―このセレクトの本を、バリバリ現役世代の方が皆さん読んでこられるって、すごいですね。

読んでこない人もいるんですよ。それでもいい。本は出発点なんです。本の内容に向かうというより、そこから出発して自分を語る読書会ですから。それに、読めないから逆にみんなで集まるっていうところもあります。読んでも分からないから、集まって、自分が分かるところをお互い出し合って、それを集めてみたら見え方が違うよねっていう。これも 1 つの読み方だと思うんですよ。

この読書会には、フォトリーダーも、そうじゃない方も来ます。フォトリーダーの中には、毎月来ることでフォトリーディングを続けていくステップにする方もいますね。

―後編に続く―